平成21年5月8日,東京都内で睡眠障害セミナー「睡眠と疾患リスク」が開催において,フィールド医学調査の結果,不眠と高血圧,脂質異常症,インスリン抵抗性,発癌との関連性が高いことが紹介されました。
参考:フィールド医学とは、地域に直接出向き,そこで生活する患者さんに医学的な対応をしていくという,地域に見合った医学の研究です。
[参考文献:睡眠障害と生活習慣病. 新しい診断と治療のABC 56: 160-170, 2008]

視床下部の視交叉上核,臓器や血管など,体内には時計のような機能を有する時計細胞,時計遺伝子,時計蛋白などがあり,光,音,気温,芳香,社会,ストレスに応答しながら,心拍,血圧,心拍数など24時間の生体リズムを守っています。 しかし,睡眠覚醒リズム,摂食リズムが乱れたり,あるいは外界の環境因子などに対する影響で,この生体リズムが崩れると,高血圧や動脈硬化を招いたり,生活習慣病の発症や肥満に影響するようです。
 北海道某町における24~79歳の住民217人に対し,睡眠と血圧日内変動との関連性について調査を行い,5年間の追跡を行ったところ,睡眠時間が長すぎる住民では,(1)起床後の疲労感が大きい,(2)朝の収縮期家庭血圧が有意に高い,(3)夜間の血圧下降度が10%未満であるnon-dipperを呈する傾向、が観察されました。同様に,住民184人を対象に睡眠と疾病の発症リスクについて検討したところ,アンケートの「昨日はよく眠られましたか」という質問に対し「十分でなかった」と回答した群は,睡眠良好であった群に比べ,心血管イベントと癌を合わせた疾病発症の相対リスクが3.17倍有意に高くなりました。同様に「いいえ」と回答した住民では,発がんの相対リスクが4.67倍有意に高くなりました。 また,寝付くまでの時間が長い(30分),いびきの期間が長い(3年),むずむず脚症候群がある,起床時に疲労感が残っている、といった人ほど,発癌の危険性が高いことが示されました。
さらに,高知県某町の地域住民418人を対象に,睡眠良好群と不眠群に分け,睡眠と生活習慣病,それらの指標となる各測定値の平均値が検討されました。 その結果,睡眠良好群に比べ不眠群では脂質異常症の頻度が有意に多くなりました。また,各測定平均値では,総コレステロール(mg/dL)は睡眠良好群194.2 vs. 不眠群207.5(以下同順),中性脂肪値(mg/dL)は98.4 vs. 114.0,75mgブドウ糖負荷120分後のインスリン値(μU/L)は45.4 vs. 65.0 と,不眠群でそれぞれ有意に高くなりました。さらに,不眠群ではHOMA-IRが2.5を超えており,インスリン抵抗性の上昇が示唆されました。
 生体リズムを守るための養生訓として,(1)朝の時間帯に光を浴びること,(2)朝食の時刻を一定にすること,(3)適切な睡眠時間の確保と,起床時間を一定にすること,(4)朝の,おいしい緑茶,コーヒー,グレープフルーツなどの摂取や散歩など,適度な交感神経の緊張,(5)リタイアした後も社会活動など続けるなど,なんらかの社会的な接触を持つこと,(6)ときどき時計を見て,時刻を確認すること,(7)昼夜に適度な寒暖のメリハリや騒音・静寂リズムなどをつくること などが日常生活において重要です。

ご注意:
不眠や睡眠不足は頭痛の悪化と密接な関係がありますので、頭痛治療の一環として、当院でも対応しております。ただし院長は精神科の専門医ではありませんので、不眠のみの新規患者様、頭痛と関連しない睡眠障害、日中の眠気やうつ病の場合は対応できません。




脳神経外科(脳外科)・神経内科・頭痛外来の樋口脳神経クリニックには、兵庫県の阪神間 (西宮、芦屋、尼崎、宝塚、伊丹、川西)、神戸市や大阪府下の広範囲から患者さんが受診されます。主な対象疾患は、頭痛、特に片頭痛 (偏頭痛)、緊張型頭痛 (筋収縮性頭痛、筋緊張性頭痛)、群発頭痛です。さらに、高血圧の治療、脳卒中 (脳梗塞、脳出血)の予防に対応します。院長の樋口真秀は大阪大学医学部を卒業した「脳神経外科の専門医」であり、日本頭痛学会より認定された「頭痛専門医」です。